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こんなときどうすればいい?

 

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第7回目医療事故

医療事故ではないか?と思ったら

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2. ミスを認めさせるだけでは裁判には勝てない

1 損害賠償が認められる条件
2 賠償が認められる過失(ミス)は理想的な医療ではない
3 過失(ミス)だけを認めさせたのでは裁判では勝てない

 医療事故があったと思われる場合に、病院側に何かしらのミスが認められれば、裁判で損害賠償は認められるでしょうか?

 実は、そんなに単純ではありません。

1 損害賠償が認められる条件

 医療事故で裁判を起こすという場合、法律上の根拠は、交通事故などと同じ「損害賠償請求」になります。

 この損害賠償請求は、次のように、①過失(ミス)、②損害、③過失と損害の因果関係がすべて認められた場合(*)に、ようやく認められるのです。

(*正確に言えば、「過失による違法な行為」というものも必要だと言われていますが、過失の判断とほぼ重なるので、ここでは省略します。また、「損害」には、悪い結果そのものを損害と評価する場合と、死亡や重大な後遺障害に至ることを避けられた相当程度の可能性を侵害されたことを損害と評価する場合がありますが、ここではこの点の詳しい説明は省略させていただきます。)

2 賠償が認められる過失(ミス)は理想的な医療ではない

 別ページでご説明していますが、「病院に行けば治るのが当たり前」「お医者さんは病気を治すことが仕事」と思っている方が決して少なくないこともあってか、医療事故ではないかと疑った場合に、あとで振り返って考えればあれもできた、これもできたはずだという訴えをする方が少なくありません。

 これもお気持ちは理解できるのですが、残念ながら、裁判では、あとで振り返ったときに考えうる理想的な医療行為を行っていなかったからといって、それを過失(ミス)とは認定してくれません。
 裁判では、「診療当時の医療水準に適う医療行為が行われたかどうか」が過失(ミス)の判断基準となります。
 さらに、その医療水準は、全国一律ではなく、病院の規模や地域性によって変わり、当該医療機関の性格、所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮して、当該医療機関においてその知見を有することを期待することが相当と認められるかどうかによって定まるといわれています。

 このように、裁判所で認めてもらえる過失(ミス)は、あとで振り返ったときに考えうる理想的な医療行為かどうかではないので、過失(ミス)かどうかということは、その病院で期待されるべき医療水準というものをよく検討する必要があるのです。

3 過失(ミス)だけを認めさせたのでは裁判では勝てない

 みなさんが医療事故を疑った場合、病院側にミスがあったことが確認できれば、病院は責任を認めて、何かしらの謝罪や賠償などをしてくれると思うかもしれません。

 しかし、上記で説明したとおり、まず、①~③という、過失と損害との因果関係までがすべて認められなければ損害賠償は認められません。ですので、裁判では、「ミスはあったかもしれないが、そのミスによって悪い結果が生じたとは限らない」という理由で、ミスだけを認めさせても勝てないということは決して少なくありません。

 また、裁判でいう過失(ミス)は「診療当時の医療水準に適う医療行為が行われたかどうか」ですので、仮に、病院側に何かしらの落ち度があったということを認めさせたとしても、それが医療水準以上の理想的な医療行為ができなかったということだったということになると、それでは裁判で勝訴できる過失(ミス)を認めさせたことにはならないので、やはり裁判に勝てることにはなりません。

 せめてこれだけでもしてくれていれば・・・と思うことはあると思いますが、医療事故について考えるときには、「そのミスがなければ、その悪い結果は生じなかった可能性がかなり高い」ということや、「そのミスがその病院に求められる医療水準に反するミスだった」ということまで必要になるのだということを、知っておいていただければと思います。

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掲載日:
2022年10月27日
監修者:
川島 英雄 弁護士

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