弁護士と医師は似ている?
「弁護士と医師は似ている」というと、違和感がありますか?
でも、意外と共通点は多いものだと、私は思っています。
1 どちらも「委任」契約です
弁護士が依頼を受けるときの契約は、委任契約といいます。
「委任」とは、簡単にいえば、自分がやるべき行動を相手に頼むことです。
委任と似た言葉に「請負」があります。よく建築工事などで使われます。
委任と請負は、法律上は意味がだいぶ違います。
請負は仕事の完成、つまり結果を出すことが契約の目的になります。
しかし、委任は必ずしも結果を出すことが目的ではありません。結果が出るように「最善の努力をする」ことが仕事の目的になります。
お医者さんは、診療によって良い結果が出るよう「最善の努力をする」のが仕事の目的です。「治す」結果を出さなければいけないわけではないのです。
弁護士も、裁判でよい結果を出すことを保証はしません。よい結果が出るよう「最善の努力をする」のが仕事の目的です。
2 どちらもお客さんを守る仕事です
医師は「生命」や「身体」、弁護士は「権利」という違いはありますが、どちらもお客さんの大事なものを守ることを目的とする仕事です。
3 どちらも本人の自己決定が大切です
医師の世界では「インフォームドコンセント」という言葉があります。
これは、いくつか考えられる治療方法の選択肢をきちんと患者さんに提示して、それぞれのメリットデメリットを示し、患者さんが納得の上で治療方法に同意することを言います。
弁護士の世界も同様です。
相談に来る方、依頼される方の事件は、それぞれの方の人生そのものであって、それぞれの方の人生の選択であるわけです。
弁護士は、考えられる様々な選択肢を提示し、それぞれのメリットやデメリットを示しますが、最終的にどの選択をするのかは、ご本人が決断すべきことになります。
弁護士は、「社会生活上の医師」といわれることがあります。
弁護士に相談することも、病院やお医者さんを使うときと同じようにイメージしていただくと、わかりやすいと思います。
大きな法的トラブルに直面してしまい、弁護士に依頼しなければ解決できない場合というのは、いわば入院や手術のようなものです。
そうなる前に、風邪かな?と思うくらいのときや、さらにもっと早く、今はまだまだ健康だと感じているうちに健康診断を受けるような気持ちで、早めに弁護士に相談してみてほしいと思います。