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医療事故 〜もっとも大きな誤解
私が力を入れている医療事故の事件では、相談に来られた方がとても大きな誤解をしているように感じられることがあります。
それは、「お医者さんは病気を治すことが仕事」だと思っていることです。
・・・これだけでは逆に私の説明の方が誤解を受けそうなので、きちんと説明したいと思います。
お医者さんの仕事は「診療」です。そして、私たちがお医者さんに診療を申し込むと診療契約が成立します。
この「診療契約」は「準委任」といって、誰かに行動を依頼する内容の契約であるとされています。
この「委任(ここでは「準」はあまり深く考えないでください)」と対比されるのが、よく建築契約などで使われる「請負」です。この請負は、誰かに仕事の完成を依頼する内容の契約とされています。
もし、お医者さんとの診療契約が請負であれば、「お医者さんは病気を治すことが仕事」というのは正しいことになります。そして、仕事の完成が目的ですから、病気が治らなければ債務不履行となり、お医者さんは責任をとらなければならなくなります。
しかし、お医者さんは万能ではありません。どんな病気やけがも必ず治せるわけではありません。また、病気やけがの前の体の状態に完全に戻すということは、はっきりいって不可能です。
つまり、お医者さんは、仕事の完成という結果を出すことが仕事なのではなく、「病気が少しでもよくなるように頑張ることが仕事」なのです。
私たちが患者としてお医者さんに診てもらうと、つい「苦しい状態を完全に治してもらえる」と思いがちです。
苦しい思いをしていればそこから逃れたいのが心情ですから、ある意味やむをえないことではあります。しかし、「治る」という結果を求めることは、お医者さんに不可能を強いることになりかねませんし、それはもともとの診療契約の内容でもありません。このように結果を要求してしまうと、結果として、お医者さんとの良好なコミュニケーションを阻害する要因ともなってしまいます。
お医者さんも万能ではないということ、お医者さんにはできることとできないことがあるのだということを正しく理解して、お医者さんとの良好なコミュニケーションを築いていただければと思います。
それでも医療事故ではないか?という疑問が生じたら・・・遠慮なくご相談ください。
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