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コラム

 

勝っちゃいました! 北海道議会政務調査費返還訴訟。

2014年07月29日
弁護士  太田 賢二   プロフィール

 一応私が代表を務める「札幌市民オンブズマン」は、1996年、に設立した、一市民団体である。メンバーは弁護士の外、大学教授,司法書士、その他のメンバーで構成されている。札幌市民オンブズマンは、具体的には、地方公共団体等の不正、不当な行為を監視し、公正で開かれた地方自治の実現を目指すことを目的としている。私は、弁護士だが、弁護士としての立場ではなく、一市民、一道民として行動することを基本としている。

 そんな私たちは、長年、議会の政務調査費の支出のあり方を問題にしてきた。私たちの問題意識は、「政務調査費の内容・使途については、広く道民に明らかにされるべきである。」ということである。
 
 北海道議会における政務調査費は、2009年度の場合、会派に所属すると一人当たり月額53万円が支給されていた。これは全国的に見ても、極めて高額な部類に属する。政務調査費そのものをなくすべきだという意見もあるが、私たちはそこまでは言わなかった。
 
 さて2009年度において、自民党会派は、自民党北海道支部に対して、「調査委託費」として合計4445万円の支出を行った。民主党会派は、民主党北海道に対して、「人件委託費等」として合計2750万円の支出を行った。しかしながら、これらの「調査委託費」及び「人件委託費等」名目の支出は、いずれも具体的にいかなる委託契約について支出されたのか、その具体的な委託の内容、金額の積算根拠など、収支報告書及び領収書のいずれからも全く明らかではなく、これらの費用が真に「議員の調査研究に資するために必要な経費の一部として」支出されたと判断できる材料は何一つ存在しなかった。むしろ、支出先が会派の所属する政党の支部であること、支出金額が1か月ごとに概ね一定額であることなどからは、これは政党支部を利用した政務調査費の目的外支出である疑いがきわめて強い。
 
 そこで私たちは、同監査事務局への監査請求を経た上で、住民訴訟を提起した。各会派は、私たちの粘り強う要請と裁判所からの訴訟指揮に基づき、しぶしぶながら調査委託費の内容を一定明らかにしてきた。その実態は、「議会活動の基礎となる調査研究活動と(選挙を目的とした)政党活動の両面があった」
と評価せざるを得ない内容だった。
 
 そのため裁判所は、「それぞれの業務委託料の金額は、合理的な根拠で算出されていない以上、政務調査費としての支出が許されるのは2分の1にとどまる、」合計3792万円を、北海道に返還するように命じた。実質的な全面勝訴だ。正直、ちょっとビックリしたが、改めて判決を読んでみると、すごくまっとうな論理構成である。私たち市民感覚にぴったりくる。
 さて、どうやら会派側は、控訴したようだ。
 
 でもね、議員活動に必要であるというのであれば、堂々と使用されればよろしい。「議会と行政側との緊張関係」「議会の自立判断」などという理由が一定あろうとも、政務調査費が税金でまかなわれている以上、その使途は、十二分に説明されなければならない。
 
 私たちの市民目線の闘いは、まだまだ続きそうだ。
 
 
 
 
 
 

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