バランスのとれた男女共同参画を
近年、弁護士の世界でも、男女共同参画を推進しようという動きがとても進んでいるようです。確かに、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする(注:弁護士法1条にこう書いてあります)弁護士の世界に男女不平等が存在したのでは、社会全体で男女共同参画を推進していくのはなかなか難しいですよね。
しかし、実はこの「男女共同参画」も、実態に合わせた適切な動きでなければ、かえって問題を生じさせてしまう可能性があります。
例えば、弁護士の世界の話でいえば、そもそも日本全国の弁護士のうち女性弁護士の割合は20%にも満たないのです。男女共同参画推進の動きによる目標として「指導的地位に占める女性の割合が少なくとも30%程度」というのがありますが、これをそのまま現在の弁護士の世界に当てはめてしまったら…そもそも20%も存在しない女性弁護士が無理に30%を占めるように指導的地位に就かざるを得なくなり、結果的に、女性弁護士を多忙な業務に追い込むことにもなりかねないのではないでしょうか。実際、私の知り合いの女性弁護士の中には、既に女性であることを理由に様々なところから声がかかり、多忙な業務に追い込まれている方が多いように見受けられます。
こういう場合、「その母数における男女比率に応じて、不当に女性の占める比率が低くなることのないように」目標値を立てることが正しいのではないでしょうか。本来、弁護士の世界で男女平等を実現するにはそもそも「女性弁護士数を増やす」ことが大前提であって、これを本当に実現するには「女性の司法試験合格比率を高める」「女性がもっと受験しやすいようにする」といった思い切った政策が必要になると思うのですが…。
もしかすると、現に生じてしまっている男女不平等状態を変えていくには、少し無理をしてでも積極的な方法をとっていかなければならないのかもしれません。でも、あまり無理をしてしまうと、結果的に女性自身がつらい状況に追い込まれてしまうことにもなりかねないのではないでしょうか。
男女比率がほぼ同数の世界であれば、30%どころかできる限り50%を目標に女性の参画を推進すべきでしょう。ですが、そうでない場合には、その状況に応じて「バランスのとれた共同参画」を目指していった方がよいのではないか、と思います。